2014年5月26日月曜日

情報整理 【18】


リフテンに帰り着いてすぐに配達人から手紙を受け取った。


ついこの間ラグドフラゴンの中で放り出されていたドワーフの弓を手に入れたのだが、それに関しての手紙のようだ。どうやらこれを売って欲しいらしい。
そのうち観光がてら行ってみようかな。
早速仕事の結果をメイビンオブ・ザ・デイドラに報告しに行く。


「朗報を持ってきたと思っていいのでしょうね」
「サビョルンの排除は済みましたが、正直なところ得られた情報はごく僅かです。こちらの書類を御覧ください」

そういってこの前手に入れた契約書を見せると、メイビンは皺の多い顔に更に皺を増やしてその書類を睨みつける。彼女の中では静かな怒りが煮えているのであろう。


「……私に喧嘩を売ったことを公開させてあげましょうか」
「御意」
「では自分のギルドに戻りなさい。さっさと調査を進めるのですよ」

ギルドに戻った私はブリニョルフに仕事の報告を行う。
「かわいそうに、サビョルンはこれで自分の醸造所を失ったわけだ」
「そしてメイビンには幸運なことに、商売敵がいなくなった」


「その通りだ!」
「それにしてもこのマーク、どうやら狙いはメイビンもそうだけれど、うちらにも攻撃を仕掛けてきているように思えるのだけれど」


「そうだな。最初はアリンゴス、今度はサビョルン。これは偶然じゃない」
「私達に喧嘩を売るなんて結構度胸のある奴だね」
「ああ、並大抵のやつじゃない。外堀をなくして俺達を孤立させようって気なんだろう。かなり周到に練られた計画だ。……ああそうだ、メルセルがお前のことを呼んでいたぞ。かなりプッツンしてたから、さっさと言った方がいい」
「ゲー。私あいつ苦手なんだよね。底意地悪そうっていうか」
「そういうな。あいつがいるからこのギルドは保ってるんだ」

陰鬱な気分でメルセルの元へ向かうと、ギルドマスターの机に手をついてため息をもらす彼の姿があった。そのため息に混じって、怒りすらも吐き出されているのだろう、辺りにはピリピリとした空気が広がっている。


「ただいまメルセル」
「やっと来たか下っ端。早速だが話がある。俺達はこの謎のマークの持ち主を始末しにかかる。やる気はあるか?」
「もちろん。殺せばいいんでしょ」

事も無げに自分の口から殺すなどという言葉が出てきたことに、私は自分でも少々驚いていた。その時の自分は冷徹で、野太刀を振るうことに何の躊躇いも感じていなかったのだ。朱に染まれば赤くなるというが、私も随分悪党に染まってきたようだ。


「敵を甘く見るなよ小娘、奴らは侮れん」
「わかってるよ。それで、次はどうすればいいの?」
「向こうは一つ大きな失敗を犯している」


「っていうと?」
「お前が持ってきた羊皮紙にガジュル・レイと書かれていた。こいつはうちの密偵が以前使っていた偽名だ」
「なるほどね、飼い犬に手を噛まれたわけね」
「正確には飼いトカゲだがな」
「アルゴニアンが密偵だったの?」
「アルゴニアンは勤勉で大人しく、闇に潜むのが上手い。理想的な密偵だ。といっても、こいつは少々癖のある奴だったがな」
「それで、そいつをどうするわけ?」


「現地でヤツを探して尋問しろ。何かわかったら教えてくれ」
「りょーかい」

出発する前に情報を整理しておこう。
まずメイビンの醸造所の原料販売元が突然メイビンと手を切った。
それと同時にメイビンの商売敵にその原料が売られていた。
その商売敵を何とかして消し去ったが、相変わらずこの動きを仕組んだ人間が誰だかはわからない、と。
そしてこれらの取引の仲介をしたガジュル・レイを尋問するのがこれからの動き。

盗賊というよりも、マフィアの抗争めいた雰囲気をかもし出してきたなぁ。

乾杯 【17】

無事に雇いの悪漢、要するに復讐屋共を返り討ちにしてサビョルンの元へと戻る。

「仕事終わりましたよー」

しかしサビョルンは私をジト目で見ると、こう言った。

「何をそこで突っ立ってる? さっさと毒を巣に仕込んでこい」

思わずぽかんと口を開ける。今しがた全部始末し終えたところなのに。余計なのも全て一緒くたに。

「いやだから元凶の基地外も殺し終わったんですけど」
「何をそこで(ry」

お前も一緒に殺してやろうかと喉まで出かかるが、重要な事を思い出す。そういえば巣に毒を振りかけていなかったのだ。おまけに醸造樽に毒を入れることすらも忘れていた。

「ああああもう!!」

わかりにくい!
毛も逆立つような洞窟に再び潜り込み、腐った精神とフレッシュな死体の間をくぐり抜けて毒をばらまく。このままみんな死んじゃえばいいんだなんて気分にすらなってしまう。こんな小柄な少女をこんなやばいところに送り込むなんてどうかしてる! 自分でやるっていったけどさ!


「ただいま!! 終わったよ!! クソッタレ!」
「待ちかねたよ。終えるまで隊長を待たなくちゃならなかった」

今にも野太刀を抜きそうな勢いで飛び込んできた私に、皮肉を浴びせかけるサビョルン。コイツ自体が毒の塊みたいなもんだよ。

引き伸ばすから髪も抜けるんだよ(無根拠

「終わったんだからさっさと給金ちょうだい!」
「隊長が去るまで待ってくれ。待てないこともないだろう?」
「そんな都合よくすぐに現れるわけな……」


「何このスピードこわ……」

突然現れた衛兵隊長はもう待ちきれないと言わんばかりに試飲用の樽へと近づく。サビョルンの歯の浮くようなセールストークと

あたりめーのことしたり顔で語ってんじゃねえハゲ

衛兵隊長の気取ったアホのような語りを耳にしながら、私はことが起きるのを待った。というよりも衛兵隊長の出現があまりにもタイミングが良すぎて呆然としていたというのが正しいだろう。
だが次に出てきた言葉に現実に戻される。なにせ、衛兵長は突然声を荒げたかと思うとサビョルンをしょっぴくと言い出したのだ。当初の計画通りに事が進み、思わずにやけそうになる。

ずっと繋いだまま(意味深

「ダメだ、直視すると笑っちゃう……」

と呟きいつの間にかいたマラスを見ると、私よりも凄まじい怨嗟のこもった笑みをサビョルンに向けていた。私と目が合うと、彼は小さくガッツポーズを取る。同じポーズで返すと、彼は喉を鳴らすようにグググと笑った。

「こんな毒の入ったものを飲ませやがって! サビョルン! お前は独房入りだ!」
「そんなはずは! 待ってくれ、話を聞いてくれ!」
「黙れ! 今すぐ付いて来い!」

怒髪天(髪もないけど

剣を抜いてサビョルンを連れて行く衛兵長は、去り際にこの醸造所の管理をマラスに一任して出て行った。

まだ笑うな……こらえるんだ……

新機動戦記ハゲW(ダブル

二人が出て行った後で数十秒経ってから、マラスと私はお互いの顔を見合った。マラスの顔も私の顔も、こらえきれない笑いを必至に押さえる非常に奇妙なものだった。

「ダーッハッハッハッハ!!」
「ちょっとプフ、マラス笑いすぎアッハッハッハッハッハ!」
「あのハゲのブチ切れるところ見たかよエルゥ! グハハハハ!」
「どっちもハゲだからわかんないわよ! プッハッハッハ!」

それから数分間私達は笑い転げ、落ち着いたあとも何度も思い出し笑いをする。こんなに笑ったのは久しぶりだ。
二人で一杯だけ酒を飲み交わして(勿論、無害な方を)落ち着いてから、本題を切り出す。
「あー笑った。あーそうだったそうだった、マラスさーサビョルンの書類を見せてくれない? ヒック」
酒のせいか、いつもよりも遠慮のない話し方になってしまっていたが、この笑いの渦と酒の酩酊感の中ではそんなことはどうでもよかった。酒を飲んで嫌なことを忘れるなんてどうかと思ったけれども、たまにはこういうこともいいのかもしれない。

「おいおい、子供が駆けつけに一杯なんてするもんじゃないぞ。まあ今日の俺はご機嫌だからそんなことどうでもいいけどな。サビョルンの書類が見たいってことは、あいつの秘密のパートナーをメイビンに報告しなけりゃいけないんだろう?」


「そうそうー。それ探して来いって言われてるのあの鬼ババァに」
「鬼なんて口にするもんじゃないぞエルゥ。死にたくなければな」

急に真面目な顔でマラスが言う。もしや告げ口でもするつもりなのだろうか。そう思って身構えると、次に彼はこう言った。

「鬼どころじゃない、デイドラだからな! ギャッハッハッハッハ!」
「アハハハハハハハハ!」

祝杯だー、と次々と蜂蜜酒のボトルを開けていくマラスを尻目に、サビョルンの書斎へ向かう。机の鍵を先ほどもらったので、さっさと調べなくてはいけないのだ。酔ってしまってからでは探せないだろうから。


「えーと……ヒック」


「何このマーク。黒歴史ノートみたいーアハハハ」

なんだか重要そうな書類を見つけて、それをポーチへと仕舞いこむ。

「あーそうだ、蜂蜜酒って結構美味しいから持って帰ろうーっと」

樽の中に入っている蜂蜜酒を数本仕舞い込み、私は一晩中マラスとどんちゃん騒ぎをして眠った。酒もなかなかいいものだ。何より、祝い事に飲む酒は美味しい。今までは嫌っていたけれど、飲んでみることにしよう。

2014年5月13日火曜日

はちみつと毒牙【16】

マラスと別れた私は再びホニングブリューにやってきた。夜になるとスカイリムの看板は光るのだが、これがなかなか大人なムードを醸し出している。




「あ゛ぁ゛?」

と下から睨みつけるとぐっ、と黙ったサビョルンにマラスから頼まれて害虫退治を請け負ったと告げると、憮然とした態度で報酬の話を持ちかけてきた。

「報酬はきっかり完了したら払わせてもらう」

それを聞いて一瞬安心した私だったが、すぐに計画の詳細を思い出す。要するに私がスキーヴァー共を殺し尽くした時には、こいつもこの醸造所から追い出されているのだ。だから前金ももらわないと、私はギルドの報酬しかもらえないことになってしまう。どうせなら一粒で二度美味しい思いをしたい。

「いや、前金でも払ってよ」
「何故だ? 何故そんなことをしないといかんのだ。ああ、そうか。お前のような子供に頼むんだものな。仕事中につまむお菓子でも買いたいのか?」
「あんたがどう思おうと勝手だけど、これは契約だし。信用を目で見える形で表明するためには金が一番だと思うんだけど。前金だけもらってとんずらする気もないし、前金を払って私が仕事をしなかったら衛兵に突き出せばいいだけでしょ?」
「信用だと? 面白いことをいう小娘だ」

そういってにやにやとした顔で私を見下ろしてくるサビョルンに、私はふつふつと怒りがこみ上げてきた。こいつもメイビンと似たり寄ったりのクソド外道に違いない。

「あっそ。だったらスキーヴァーがいるよってホワイトランの市場で叫んであげる」


するとサビョルンは今までの態度が嘘かのように、おどおどと条件を下げてきた。

「あわてて決める必要はないだろう? 先に仕事の話をしようじゃないか」
「マラスから大体は聞いたよ」
「話が早くて助かる。これがその殺鼠剤だ。それと前金もだ」

手渡された瓶と金貨をポーチにしまいこみ、さてじゃあさっさと仕事をするかと思ったが、1つ気になったことがあったので聞いてみることにした。

「ところでマラスについてなんだけど」

そう問いかけると、彼は得意気に鼻息荒くべらべらと喋ってくれた。


「へー。それで?」


「なるほど。さすが経営者。人件費が一番高く付くものね!」
「そうだろう、賢いだろう、ハハハ」

まあ金に困っていた人間を一時的に助けたのは事実だろう。だがそれをカタに人間を買うような真似をする奴は大嫌いだ。戦争の時、売られていく人を何度も見たことがある。こいつはそういう奴隷商人と根本的に変わらない。まだメイビンのほうがマシに思えてくる始末だ。メイビンは金に関してはきっちり払っているし。

しくじったら殺される職場だけど

こいつをはめることに関して私の良心の呵責はなくなった。

「その顔が驚きと苦痛で歪むのを見るのが楽しみだ(ボソッ」
「何か言ったか?」
「いいえ。じゃ、仕事してくるね」

溢れだす笑みを存分に見せつけてカウンターを後にした。その笑みに「ああ可哀想に、数時間後には全て失って絶望にくれることになるのね」なんて意味がこもっているとも知らずに。


保管庫は予想よりもずっと汚かった。床板は割れているし、藁が転がったままになっている。こんな衛生状態でよくもまあ、今までやってこれたものだ。私達が動かなくても廃業になっていたんじゃないだろうか。


スキーヴァー退治の前に寝室を漁ってみる。ベッドの下にこんなものがあった。
アルゴニアンの侍女とか、うーんなんかやだなぁ、と思って中身を読むとパンがパンパンに膨らんで炉にはいらないとか、奥様の炉に入ることになっちゃって嫌だわ、なんて意味のわからないことが書いてあった。
意味がわかんないけど、ベッドの下においてあるくらいなんだからお気に入りの本なんだろう。


机にはメイビンからの脅迫状親書が入っていた。相変わらずこすっからいやり口をしているようだ。サビョルンもこれを衛兵隊のところに持っていけばいいのに。


他にめぼしいものもないので、地下貯蔵庫へと向かった。あからさまに血飛沫が飛び散っている上にトラバサミまで設置してある。これだけわかってるならさっさと塞いでしまえばいいものを。全く無能な経営者だなぁ。


中に入ると数匹のスキーヴァーが私を見つけて、血走った目で走り寄ってきた。刀で軽く切り払うが、その際にこいつらが奇妙にも毒を持っていることに気づいた。そういう種類のスキーヴァーなのだろうか。スキーヴァーはただでさえ病原菌まみれなのに、更に毒まで持っているなんてヤバイことこの上ない。じわじわと体から力が抜けて、食い殺されるんだろうなと想像してしまって背筋がぞっと寒くなった。
まあ疫病退散のポーションも持っているし、大したことにはならないだろうとタカをくくって私は奥に進んだ。貯蔵庫の一部の壁が崩れて、洞窟につながっていたのだ。

ライフルを構えてこうやって進んでいると、まるで冒険家になったみたいだ。そう思うとワクワクして、さっさと化け物退治でもやりたい気分になってくる。

「ふふん、おいでよ化け物共。かもんかもーん」


イヤァァァァァ!! 蜘蛛イヤァァァァァァ!!

奥から溢れるように湧いてくる蜘蛛!

「アパーム! 弾持ってこいアパァァァム!」



「ハァ……ハァ……蜘蛛だけを殺すスイッチがあったら躊躇なく押すのに」



さらに奥へと進んでいくと、またたくさんのスキーヴァー(毒)がいたので炎の精霊を召喚し、盾にしながら進んでいく。噛み付いたスキーヴァーがそのまま焼かれて死ぬので便利なのだ。
と思っていたら奥から突然人の声が聞こえてきた。てっきり迷い込んだかわいそうな従業員かと思ったが違うらしく、魔法で炎の精霊を吹き飛ばしてしまったのだ。
防具はボロ布をまとっているだけで一切なかったので、フリントロックライフルで胸をぶちぬいてやると即死した。こんな小さな筒から出た鉄の玉が、人の胸をずたずたに引き裂いてスープのようにしてしまうとは……。

アッムリ~ン☆
調べたところ、どうやらこいつが毒牙をもったスキーヴァーを繁殖させた張本人のようだ。日記を持っていたので見てみよう。それにしてもみんな偉人も変人も日記をつけるのが好きだな。

軍(笑)
要するに迫害された秀才ってところなんだろうけど、常識をわきまえない上に人の役に立たない研究をしていればこうなるよねー。ただの害悪以外の何者でもないもの。害虫駆除と言われてきたけど、何も間違ってなかった。

アッハイ

ここで寝泊まりしていたのだろう、錬金術セットと藁布団がある。
さて元凶も倒したしさっさと帰ってスイートロール食べよ!

何だてめぇらァ(イノセンスのチンピラ風

樽に毒を放り込んで一旦外にでると、突然重装備の見るからに山賊な奴らに絡まれた。
「手ほどきをしにきた」というなり突然剣を抜かれたので、ひたすら走って距離を取り、ライフルで撃つ。

ハイクを詠め

最後の一人は刀でカイシャクしてやる。
なんなんだこいつら、と思って懐を探るとこんなものが出てきた。

「……誰?」

2014年5月1日木曜日

酒場での打ち合わせ 【15】

少し時間が空いてしまったがホニングブリューに行くとしよう。インスマスやアーカムやコービットの屋敷に出張していたりシナリオを組んでいたので最近色々慌ただしかったのだ。

メイビンに言われたとおりホニングブリュー蜂蜜酒醸造所についた。ホワイトランのすぐそばの街道沿いにあり、独特の爽やかさがある。リフテンのブラックブライア醸造所と違い、アルゴニアンが泳ぐ水で作ったりはしていないようだ。
私は多分大人になってもブラックブライアの蜂蜜酒は飲まないだろうな。なんでかって、あんな街で作られた酒だなんて知っていたら、誰だって飲みたくなくなるものだ。冒涜と野心の蜂蜜酒なんてラベルをつけたら逆に売れそうな気もするけども。


いい雰囲気だ
屋根の傾斜がすさまじいのは雪国特有
外から見る分には綺麗な醸造所だ。裏手に川が通っていて、綺麗な雪解け水も確保できそうだし品質に関しては信頼できそうだ。
と思った私の考えはあっという間に覆される。
中は散らかっていて挙句の果てにスキーヴァー(ネズミ)の死体まで転がっているのだ。清潔、という言葉とは程遠い内部事情のようだ。
挙句にオーナーのサビョルンに話しかけると世間話もそこそこに出て行ってくれと言われてしまった。この惨状を見られるのが気に召さないらしい。


さてどうするかと思って日記帳を開くと、すっかり忘れていたことが書いてあった。先に協力者のいるバナード・メアに行かなければいけなかったようだ。見学ありがとうございましたと言って、さっさとバナード・メアに向かう。

わいわいがやがやとうるさい酒場の中を酒も注文せずに奥へ進んでいくと、お目当ての人物を発見することが出来た。マラス・マッキウスだ。

「どうも。盗賊ギルドの駆け出しのエルゥです」
「あんたが? こんな子供が?」
「ああはいはい。もう慣れっこですよ。いいから仕事の話をしよう」
「……ま、いいか」

面倒くさそうに机に肘をつく私をじろじろと見ながら、彼はなかなか大胆な計画を語った。




「思い切ったことをするもんだね。毒はどうやって調達するの?」
「そこがこの計画の素晴らしいところさ。サビョルン自身が用意した毒を使わせてもらう」
「殺鼠剤か」
「察しがいいな。頭の回転が速いやつは好きだ」
「貰ったその毒を蜂蜜酒の樽に放り込む、と」
「そういうことだ」
「ところで、どうしてこんなことを? メイビンの話じゃ、あんたはホニングブリューの従業員なんでしょ?」
「従業員だと?」

そういうとマラスはワインの入ったグラスを机に叩きつける。その衝動に並々ならぬものを感じ取ったが、彼が激情を言葉にして吐き出すのを待った。

「それは違う。俺は奴隷さ。昔サビョルンに金を借りたんだ。そして俺は期日までに払えなかった。そうしたらあの野郎、俺のことを何年もこき使ってやがるのさ。給料も休みもなくな!」

金を借りて払えなかったら当然だと思ったが、これだけ激昂しているところを見るととっくにその金額分の働きはこなしたのだろう。誰かが奴隷がほしいなら、返せないだけの金を貸すか、命を救うかのどちらかが必要だと言ったけれども、まさにそれをやられたわけだ。

「それは大変だったね。ところで醸造用の大樽へはどうやっていけばいい? そうやすやすと入れるものなわけ?」
「スキーヴァーが作った穴が保管庫と醸造樽まで続いてる。それをたどればいいんだ」
「なるほどね。結構くっさい任務だなぁ」
「ネズミに怖気づいたか」
「違うよ。色々な意味でくっさいなぁって。たかがネズミにそこまで手こずるもんかね。それにこんなことをしてあんたに何のメリットが有るの?」
「メリットってお前、そりゃあるさ。この仕事が済んだら当然サビョルンは衛兵長に捕まる。そしたらあの醸造所を誰が取り仕切ると思う? お前の目の前の男、マラス・マッキウス様さ」
「へー。なるほどね」
「お互いに利益のある最高の仕事だろう?」
「ああそうね」

気のない返事を返しながら、私はメイビンがスカイリムの2大醸造所を手に入れることに危機感を感じた。あのメイビンのことだ、蜂蜜酒の独占権を入手したらどんな方法で利益を出すかわかったもんじゃない。
だけど、今の私はメイビン側なのだ。

「んじゃ、もっかいホニングブリューに行ってくる」
「ああ、頼んだぞ小さなキーパーソン。俺達の成功を祈って乾杯だ」