少し時間が空いてしまったがホニングブリューに行くとしよう。インスマスやアーカムやコービットの屋敷に出張していたりシナリオを組んでいたので最近色々慌ただしかったのだ。
メイビンに言われたとおりホニングブリュー蜂蜜酒醸造所についた。ホワイトランのすぐそばの街道沿いにあり、独特の爽やかさがある。リフテンのブラックブライア醸造所と違い、アルゴニアンが泳ぐ水で作ったりはしていないようだ。
私は多分大人になってもブラックブライアの蜂蜜酒は飲まないだろうな。なんでかって、あんな街で作られた酒だなんて知っていたら、誰だって飲みたくなくなるものだ。冒涜と野心の蜂蜜酒なんてラベルをつけたら逆に売れそうな気もするけども。
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いい雰囲気だ |
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屋根の傾斜がすさまじいのは雪国特有 |
と思った私の考えはあっという間に覆される。
中は散らかっていて挙句の果てにスキーヴァー(ネズミ)の死体まで転がっているのだ。清潔、という言葉とは程遠い内部事情のようだ。
挙句にオーナーのサビョルンに話しかけると世間話もそこそこに出て行ってくれと言われてしまった。この惨状を見られるのが気に召さないらしい。
さてどうするかと思って日記帳を開くと、すっかり忘れていたことが書いてあった。先に協力者のいるバナード・メアに行かなければいけなかったようだ。見学ありがとうございましたと言って、さっさとバナード・メアに向かう。
わいわいがやがやとうるさい酒場の中を酒も注文せずに奥へ進んでいくと、お目当ての人物を発見することが出来た。マラス・マッキウスだ。
「どうも。盗賊ギルドの駆け出しのエルゥです」
「あんたが? こんな子供が?」
「ああはいはい。もう慣れっこですよ。いいから仕事の話をしよう」
「……ま、いいか」
面倒くさそうに机に肘をつく私をじろじろと見ながら、彼はなかなか大胆な計画を語った。
「思い切ったことをするもんだね。毒はどうやって調達するの?」
「そこがこの計画の素晴らしいところさ。サビョルン自身が用意した毒を使わせてもらう」
「殺鼠剤か」
「察しがいいな。頭の回転が速いやつは好きだ」
「貰ったその毒を蜂蜜酒の樽に放り込む、と」
「そういうことだ」
「ところで、どうしてこんなことを? メイビンの話じゃ、あんたはホニングブリューの従業員なんでしょ?」
「従業員だと?」
そういうとマラスはワインの入ったグラスを机に叩きつける。その衝動に並々ならぬものを感じ取ったが、彼が激情を言葉にして吐き出すのを待った。
「それは違う。俺は奴隷さ。昔サビョルンに金を借りたんだ。そして俺は期日までに払えなかった。そうしたらあの野郎、俺のことを何年もこき使ってやがるのさ。給料も休みもなくな!」
金を借りて払えなかったら当然だと思ったが、これだけ激昂しているところを見るととっくにその金額分の働きはこなしたのだろう。誰かが奴隷がほしいなら、返せないだけの金を貸すか、命を救うかのどちらかが必要だと言ったけれども、まさにそれをやられたわけだ。
「それは大変だったね。ところで醸造用の大樽へはどうやっていけばいい? そうやすやすと入れるものなわけ?」
「スキーヴァーが作った穴が保管庫と醸造樽まで続いてる。それをたどればいいんだ」
「なるほどね。結構くっさい任務だなぁ」
「ネズミに怖気づいたか」
「違うよ。色々な意味でくっさいなぁって。たかがネズミにそこまで手こずるもんかね。それにこんなことをしてあんたに何のメリットが有るの?」
「メリットってお前、そりゃあるさ。この仕事が済んだら当然サビョルンは衛兵長に捕まる。そしたらあの醸造所を誰が取り仕切ると思う? お前の目の前の男、マラス・マッキウス様さ」
「へー。なるほどね」
「お互いに利益のある最高の仕事だろう?」
「ああそうね」
気のない返事を返しながら、私はメイビンがスカイリムの2大醸造所を手に入れることに危機感を感じた。あのメイビンのことだ、蜂蜜酒の独占権を入手したらどんな方法で利益を出すかわかったもんじゃない。
だけど、今の私はメイビン側なのだ。
「んじゃ、もっかいホニングブリューに行ってくる」
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