2014年5月13日火曜日

はちみつと毒牙【16】

マラスと別れた私は再びホニングブリューにやってきた。夜になるとスカイリムの看板は光るのだが、これがなかなか大人なムードを醸し出している。




「あ゛ぁ゛?」

と下から睨みつけるとぐっ、と黙ったサビョルンにマラスから頼まれて害虫退治を請け負ったと告げると、憮然とした態度で報酬の話を持ちかけてきた。

「報酬はきっかり完了したら払わせてもらう」

それを聞いて一瞬安心した私だったが、すぐに計画の詳細を思い出す。要するに私がスキーヴァー共を殺し尽くした時には、こいつもこの醸造所から追い出されているのだ。だから前金ももらわないと、私はギルドの報酬しかもらえないことになってしまう。どうせなら一粒で二度美味しい思いをしたい。

「いや、前金でも払ってよ」
「何故だ? 何故そんなことをしないといかんのだ。ああ、そうか。お前のような子供に頼むんだものな。仕事中につまむお菓子でも買いたいのか?」
「あんたがどう思おうと勝手だけど、これは契約だし。信用を目で見える形で表明するためには金が一番だと思うんだけど。前金だけもらってとんずらする気もないし、前金を払って私が仕事をしなかったら衛兵に突き出せばいいだけでしょ?」
「信用だと? 面白いことをいう小娘だ」

そういってにやにやとした顔で私を見下ろしてくるサビョルンに、私はふつふつと怒りがこみ上げてきた。こいつもメイビンと似たり寄ったりのクソド外道に違いない。

「あっそ。だったらスキーヴァーがいるよってホワイトランの市場で叫んであげる」


するとサビョルンは今までの態度が嘘かのように、おどおどと条件を下げてきた。

「あわてて決める必要はないだろう? 先に仕事の話をしようじゃないか」
「マラスから大体は聞いたよ」
「話が早くて助かる。これがその殺鼠剤だ。それと前金もだ」

手渡された瓶と金貨をポーチにしまいこみ、さてじゃあさっさと仕事をするかと思ったが、1つ気になったことがあったので聞いてみることにした。

「ところでマラスについてなんだけど」

そう問いかけると、彼は得意気に鼻息荒くべらべらと喋ってくれた。


「へー。それで?」


「なるほど。さすが経営者。人件費が一番高く付くものね!」
「そうだろう、賢いだろう、ハハハ」

まあ金に困っていた人間を一時的に助けたのは事実だろう。だがそれをカタに人間を買うような真似をする奴は大嫌いだ。戦争の時、売られていく人を何度も見たことがある。こいつはそういう奴隷商人と根本的に変わらない。まだメイビンのほうがマシに思えてくる始末だ。メイビンは金に関してはきっちり払っているし。

しくじったら殺される職場だけど

こいつをはめることに関して私の良心の呵責はなくなった。

「その顔が驚きと苦痛で歪むのを見るのが楽しみだ(ボソッ」
「何か言ったか?」
「いいえ。じゃ、仕事してくるね」

溢れだす笑みを存分に見せつけてカウンターを後にした。その笑みに「ああ可哀想に、数時間後には全て失って絶望にくれることになるのね」なんて意味がこもっているとも知らずに。


保管庫は予想よりもずっと汚かった。床板は割れているし、藁が転がったままになっている。こんな衛生状態でよくもまあ、今までやってこれたものだ。私達が動かなくても廃業になっていたんじゃないだろうか。


スキーヴァー退治の前に寝室を漁ってみる。ベッドの下にこんなものがあった。
アルゴニアンの侍女とか、うーんなんかやだなぁ、と思って中身を読むとパンがパンパンに膨らんで炉にはいらないとか、奥様の炉に入ることになっちゃって嫌だわ、なんて意味のわからないことが書いてあった。
意味がわかんないけど、ベッドの下においてあるくらいなんだからお気に入りの本なんだろう。


机にはメイビンからの脅迫状親書が入っていた。相変わらずこすっからいやり口をしているようだ。サビョルンもこれを衛兵隊のところに持っていけばいいのに。


他にめぼしいものもないので、地下貯蔵庫へと向かった。あからさまに血飛沫が飛び散っている上にトラバサミまで設置してある。これだけわかってるならさっさと塞いでしまえばいいものを。全く無能な経営者だなぁ。


中に入ると数匹のスキーヴァーが私を見つけて、血走った目で走り寄ってきた。刀で軽く切り払うが、その際にこいつらが奇妙にも毒を持っていることに気づいた。そういう種類のスキーヴァーなのだろうか。スキーヴァーはただでさえ病原菌まみれなのに、更に毒まで持っているなんてヤバイことこの上ない。じわじわと体から力が抜けて、食い殺されるんだろうなと想像してしまって背筋がぞっと寒くなった。
まあ疫病退散のポーションも持っているし、大したことにはならないだろうとタカをくくって私は奥に進んだ。貯蔵庫の一部の壁が崩れて、洞窟につながっていたのだ。

ライフルを構えてこうやって進んでいると、まるで冒険家になったみたいだ。そう思うとワクワクして、さっさと化け物退治でもやりたい気分になってくる。

「ふふん、おいでよ化け物共。かもんかもーん」


イヤァァァァァ!! 蜘蛛イヤァァァァァァ!!

奥から溢れるように湧いてくる蜘蛛!

「アパーム! 弾持ってこいアパァァァム!」



「ハァ……ハァ……蜘蛛だけを殺すスイッチがあったら躊躇なく押すのに」



さらに奥へと進んでいくと、またたくさんのスキーヴァー(毒)がいたので炎の精霊を召喚し、盾にしながら進んでいく。噛み付いたスキーヴァーがそのまま焼かれて死ぬので便利なのだ。
と思っていたら奥から突然人の声が聞こえてきた。てっきり迷い込んだかわいそうな従業員かと思ったが違うらしく、魔法で炎の精霊を吹き飛ばしてしまったのだ。
防具はボロ布をまとっているだけで一切なかったので、フリントロックライフルで胸をぶちぬいてやると即死した。こんな小さな筒から出た鉄の玉が、人の胸をずたずたに引き裂いてスープのようにしてしまうとは……。

アッムリ~ン☆
調べたところ、どうやらこいつが毒牙をもったスキーヴァーを繁殖させた張本人のようだ。日記を持っていたので見てみよう。それにしてもみんな偉人も変人も日記をつけるのが好きだな。

軍(笑)
要するに迫害された秀才ってところなんだろうけど、常識をわきまえない上に人の役に立たない研究をしていればこうなるよねー。ただの害悪以外の何者でもないもの。害虫駆除と言われてきたけど、何も間違ってなかった。

アッハイ

ここで寝泊まりしていたのだろう、錬金術セットと藁布団がある。
さて元凶も倒したしさっさと帰ってスイートロール食べよ!

何だてめぇらァ(イノセンスのチンピラ風

樽に毒を放り込んで一旦外にでると、突然重装備の見るからに山賊な奴らに絡まれた。
「手ほどきをしにきた」というなり突然剣を抜かれたので、ひたすら走って距離を取り、ライフルで撃つ。

ハイクを詠め

最後の一人は刀でカイシャクしてやる。
なんなんだこいつら、と思って懐を探るとこんなものが出てきた。

「……誰?」

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