洞窟を出てからすぐは、とても嬉しそうに歩きまわった彼女が、家についた途端に暗くなった。最初は家族が嫌いなんだろうなぁ、と思ったけれどそうではないらしい。なぜなら、彼女が私のことを見ては目を伏せるからだ。
何かあったかな、といろいろと思い出してみると、答えはすぐにわかった。
「……あぁ、そういうことか。なんとなくだけどあんたがそんなに重い雰囲気纏ってる理由がわかった気がする」
「ええ。番人の間(ステンダールの人たちのアジト)を 襲撃したのは、間違いなく私の家族絡みの吸血鬼でしょうね。でないと、ディムホロウ墓地のことも知り得ることはありませんもの」
「なるほどね。言われるまで気づかなかったよ」
「あら、言わないほうがいいみたいでしたわね」
「そうかな? 少なくとも、あなたが正直者だってことはわかったよ」
「……そうですわね。さ、奥に進みましょう。あなたも早く帰りたいでしょう」
「美味しいごちそうを食べられるなら、あんまり帰りたくないなぁ」
「期待通りにはいかないと思いますわよ」
広間に着くと、そこには信じられない光景が広がっていた。広間の机の上にのっているのは、人の死体だ。輪切り、ぶつ切り……その他もろもろ。高そうな皿にのせられてはいるが、飛び散った血の跡が下品さを際立たせている。
あまりの光景にぼーっとしてしまったが、その衝撃をかき消すように、太い男の声が響く。
「セラーナ! また会えて嬉しいぞ。星霜の書は持っているんだろうな?」
「なるほどね。あんたが家に帰りたくない気持ちがわかるよ」
そう言うと、セラーナは私に向かって少しだけ微笑みを向ける。
「もしこの場にお前の母親がいれば、この再会を見せてやった上で八つ裂きにしてやるのだが……」
「お前の母親、ね……。もう妻ですらないってわけね。見ため通りの下衆だね」
「誰だこの子供は? 手土産か? 答えろセラーナ」
「失礼だねぇ。誰がセラーナを助けてやったと思ってるの?」
そう言って刀の柄に手を伸ばすと、セラーナが私の手を握って制する。
「おー。結構くさいこと、平然と言えちゃうんだねセラーナは」
「あら、本心ですのよ」
「余計たちが悪いよ」
二人で目線を交わし、またくすりと笑う。
「つまり、そなたが我が娘を助けだしたというわけだな」
「まーね」
「我々の正体は言わずともわかるな?」
「ふーん、あっそ、それで?」
「褒美を取らせる。私の血を与えよう。これさえあれば、羊達の間を狼として悠々と歩くことが出来るだろう」
「吸血鬼になれだって?」
思わず笑いそうになる。 自分の能力を人を押し付けるためだけに使う奴らの一員になるなど、まっぴらゴメンだ。まぁ、私もそうしていた時期があるような気がするけど……。
「何百年も生きてるくせに、やってることが原始人と変わらないんじゃ程度が知れるよ」
「まだわからんか! 力を見せてやろう!」
「ダッサwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwないわwwwwwwwwwwwwwwww」
「凡百な人間にはこの良さはわからぬだろうな!」
「ピカソを理解できない奴は凡百ってかwwwウケルwwwww」
「ならばよい、殺さずにおいてやる。いねい!」
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寒そう(小並感) |
というわけで城の出口まで飛ばされた。
うーん、とりあえずドーンガード砦まで帰ろう。スカイリム横断だ、また……。
※モラグ・バルとは
冒涜と不和を象徴するデイドラ。シリーズ通して人類の敵ポジションを維持し続けているデイドラロード。バケモノらしい性格と化け物らしい見た目をしている。趣味は仲の良い奴らを争わせたりすること。