2014年3月31日月曜日

謀略のデイドラ、メイビン登場 【14】

ため息混じりに秘密の入口のボタンを押す。人の頼み事を聞いて嫌な気分になるのは切ないものだ。何より、寝覚めが悪いし、快眠できない。
重い音をたてて作動する仕掛けなのだが、これでよく周りの住民に気づかれないなと思う。もっとも、気づいていても黙っているしか無い可能性もあるが。

テレレレ↑~(ゼル伝

ブリニョルフにゴールデングロウ農園の件を伝えると、「ハァ!?」と素っ頓狂な声を上げて驚く。


「メイビンと手を切るにはこれが一番手っ取り早いからじゃないの?」

後ろ手に手を組みながら呑気にそう言うと、ブリニョルフは「まだわかってないようだな」と溜息をついた。全くもって近頃はため息が多い。昨日の一家の件もそうだし、不景気な話ばかりだ、スカイリムも。

「メイビンと手を切るということがどういうことか、お前にもわかってないはずじゃあるまい?」


「哀れアリンゴス、ソブンガルデで安らかに、ってところかな?」
「まあそんなもんだ。ところでアリンゴスの取引先が誰かわかるか?」
「わからないなぁ。その契約書に書いてあることしか」


「この記号がなんだかわかればいいんだがな」
「そうだねー。デルビンにでも聞いてみたら? 最年長でしょ」
「そうするとしよう。ところでお前に新しい仕事が来ている。あのメイビン・ブラックブライア直々のご指名だ。上手くやれよ」
「げっ! なんで私みたいな新人にやらせるの? あんた達暇なんじゃないの?」

周りを見渡すと、他のギルドメンバー達は各々訓練や雑談をしている。私の視線に気づいたサファイアという女性は、こっちにウィンクをして去っていった。どうやら誰もやる気はないらしい。

「最近また仕事が舞い込んできていてな。割とてんてこ舞いなのさ。そうは見えないのは、全員プロで仕事が手早く、やることをきっちりこなして休暇中だからだ」
「ハイハイ。どーせ新人の使いっぱですよ。でも生きて戻れるの私。ゴールデングロウ農園の件に関して大して収穫がなかったから殺されるんじゃないの。まだ死にたくないんだけど……」

笑ってごまかしてるけど怖いわ

「怖いこと言わんといてよ」
「冗談だ小娘。さぁ、さっさとメイビンのところに行くんだ。あの女はすべてが自分の思う通り迅速じゃないと気が済まないタチなんだ」
「りょうかーい」

街の宿屋の二階でメイビンと落ち合うと、私の姿を見てさっそく毒舌を吐かれた。

「そう。それで盗賊ギルドは大切なパトロンの私の仕事に、あなたのような年端も行かない子供を差し向けてきたわけですね?」

下は富士山、上は大噴火

「失望させてしまい申し訳ありません、マダム」
「今まさにそう言おうとしていたところですよ。手間が省けて大変結構です。ブリニョルフはまたしても気骨のない意気地なしを寄越したというわけですね」
「うちのギルドは信用されていないようですね」

ババァは着る服を選べ(切実

「信用など裏切られた時に対応ができない愚か者のすることです」
「それは素晴らしい心がけですね」

笑顔でババアを持ち上げつつ、よくそんなんで事業を広げられたな、と思う。ただの暴君だな、このババアは。巷じゃデイドラの一種だとか言われているのも納得がいく。謀略を司るボエシアの信者か、ボエシア本人だろうこの性格は。

「ところでどこからはじめましょうか」


「なるほど。大まかでいいから説明していただけませんか」

すると彼女は大仰に、いかにも勿体つけて私に見せびらかすようにため息をつくと、ワインを一口飲んで語り始めた。

「あなたのような子供にわかりやすいように話をしてやりましょう。うちの商売敵のホニングブリュー蜂蜜酒醸造所が最近業績をあげています。その妨害を行うという話です」
「わかりやすい説明をどうも。そこの経営者は?」


「ハッ! そのろくでなしに一杯食わされてるんだからあんたも相当な……」

そこまで言ったところで思わず目を逸らす。視線だけで肌が焼かれそうだ。沈黙に耐えかねて、もう少し知的にものを言おうと思い直す。

「つ、つまりあなた様のような手腕の経営者とライバルになるのだから、向こうも相当なやり手のようですね。あなたが自ら動くくらいですから、こっちを潰そうとする勢いで仕掛けてきてるのでしょう?」



「なるほど。事情はよーくわかりました。それではこのへんで失礼します」
「待ちなさい」

すたこらさっさと逃げようとする私に、メイビンは後ろから声をかけてくる。恐る恐る振り向くと、獲物を狩るときのオオカミのような眼光が私を射抜いた。

「な、なんでしょうか」
「確実に、やるのですよ」

微かに口元を歪ませて、だが威圧感を保ったままの瞳。まるでその言葉が呪詛のように感じられて、私は適当に返事をして、ドラゴンに襲われた時のように脱兎のごとく駆けだした。

宿から出てトボトボと歩いていると、熱心に槌を振るう鍛冶屋が目に写った。バリマンドだ。その時の私の気分は最悪だったため、バリマンドに何かしてもしかたのないことだった。そう、仕方のないことなのである。

「バリマンドさんこんにちは」
「あ、ああ」

私の方を向かずに返事をしたバリマンドにむかつきながらも、手元で作っているものに目を奪われる。

「なにそれ」
「いやこれは」

返事を聞く前にそれを奪い取り、手でバトンのようにくるくると回す。木製の板に鉄の筒が付いており、見慣れぬ仕掛けが沢山付いている。

「これってなに?」
「それは最近開発された銃ってもんだ。遠い異国の集団が持っているらしく、設計図が手に入ったから作ってみたんだ」
「どう使うの?」
「この紙に包まれた火薬と弾を先っちょから突っ込んで、火打ち石を起こし、その小さな出っ張りを指で引いてみろ」
「こう?」

次の瞬間、凄まじい爆音と共にバリマンドの足元の石畳が砕け散った。

「馬鹿野郎! 気をつけろ!」
「うっさい! こっちだってびびったよ! これ何!?」

手に持った銃を持ったまま思い切りバリマンドのスネを蹴り飛ばす。

「銃だと言っているだろう! 火薬で鉄を飛ばすものだ」
「弓とは違うわけね。うるさいし」
「そうだ。その代わり威力はすさまじいぞ」

たしかに素晴らしい威力だ。弓じゃ石畳を砕くことなんてドワーフの弓でもない限り難しいし、私に扱えるものじゃない。ただ、これなら反動にさえ気をつけていればなんとかなりそうだ。

「いいじゃんこれ、ちょうだい!」
「1000Gだ」
「案外安い」
「お前みたいな子供に払えるのか?」
「払ったろーじゃん。これでも一端の盗賊さ」

1000G入った袋をバリマンドの顔面に投げつけると、顔をしかめながらそれを数え始める。

「確かに1000Gあるな。いいだろう、持っていけ」
「やったー!」
「それにしてもお前が金を払うとはな」

ライフルを両手に掲げて跳ねまわっていると、しみじみと彼が呟く。

「常連になるって言ったでしょ?」

にやりと彼に笑いかけると、肩を浮かせて微妙そうな顔をしていた。


自宅に戻って飾ってみる。

2014年3月25日火曜日

後悔は、常に切ない 【13】

朝焼けの山々はとても美しく、私の心を洗い流してくれる。この盗賊ギルドに入って汚いことを随分こなしたけれども、まだ私には善意というものがあるみたいだ。といっても、いまさら悪名が晴れることも、罪が消えることもない。根っからの悪党のような人間にならないことを願うばかりだ。

スカイリムの朝焼けは、色々なものを洗い流す
一晩お世話になった製材所の主人に、何かお礼をしようと思って小屋を尋ねた。悪事を働いて罪を被るのが当然ならば、借りを返すのもまた摂理だ。

「ごめんください」
「リーフナーかい?」

小屋に入ると突然叫ばれたので、思わず体がびくつく。しかし叫び声の張本人は私を見ると肩を落としてため息をついた。どうやら見当違いだったようだ。妙齢の女性で、顔にはイライラとした感情が簡単に見て取れる。何かあったのだろうか。

「突然お邪魔して申し訳ないです。昨晩、勝手にこちらの製材所に泊まらせていただきました。何かお礼をしたいと思っているのですが……」

製材所のグロスタさんはなかなかにセクシーなお体を持っているが、顔のシワは隠せない。若い頃はさぞかし美人だったろうな、と今でも面影を想像できるほどである。

「あんた盗賊かい?」

その言葉に、しまったという顔を浮かべてしまう。ギルドの鎧を着たまま一般人に話しかけるのはあまりにも無頓着だった。慌てる私を一瞥すると、グロスタという女性はあなたに頼みたいことがある、と申し出た。

「夫のリーフナーが消えたのよ。お礼をしてくれるというのなら、私の夫を探してもらえない? 見たところ、あなたは盗賊のようだし、蛇の道は蛇というじゃない」

私を盗賊だとわかっていながらも、グロスタさんは落ち着いていた。

「つまり盗賊が絡んでいるんですね」
「ええ。詳しく話を聞いてもらえる?」
「もちろんです」

グロスタさんは私に向き直ると、詳しい経緯を話してくれた。それはもう、烈火の如き勢いで。

「私の夫のリーフナーが消えたのよ。どうせまた他の女の尻でも追っかけているんでしょうけど、もう我慢の限界。私のことなんてなんにも省みやしない。クソッタレよ男なんて。クソにションベンかけて醸造したら出来るのが男なんだわ! もしあんたが連れ戻してくれたら、顎の骨を砕いてやる!」

あまりの剣幕に脂汗が浮かびそうだ。自分に向けられていない怒りでも、目の前で怒声を吐かれると恐ろしいには変わりない。

「て、手がかりはありますか?」
「あるわ。リーフナーは新しい取引先が高値でうちの製材を買い取ってくれるというから、その契約に向かったの。どうせその金であたし達を捨てて、若い女と宿にでも入ってるんでしょうよ!」

体と顔のギャップがやばい
「木材を持って出向かなくちゃいけないっていうのが罠だったのよ。リーフナーだけじゃなくて、在庫も随分消え去ったわ。あたしを騙して、洗いざらい奪ったのよあのクソ野郎は!」
「それは……大変ですね」

話を聞いているうちに心底かわいそうになってくる。この人は何度も浮気をされた上で、それでも信じて一緒に暮らしていたのに全て奪われたのだから当然だ。どこか私と似た境遇のような気もして、他人事のように感じられない。私の父は何もせずに消えただけマシだけど、家も母もなくなってしまったのだから状況的には大差ない。

「その取引はどこでする、と言っていましたか?」
「ブロークンヘルム・ホロウ(洞窟)ですると言っていたわ。手がかりはそれしかないの」
「わかりました。まずはそこに行って手がかりを探してみます」
「お願いね。子供にこんなことを頼むのもどうかと思うけれども」
「心配して下さりありがとうございます。ですが、お礼はお礼です。では行って参ります」

心底侮蔑の混じった台詞
馬で街道を走りぬけ、ブロークンヘルムホロウまで一直線に向かう。

山賊の砦をスルーし
オオカミをぶち殺し
追いかけてくる山賊を撫で斬る
そんなこんなでブロークンヘルムホロウに辿り着いた。
中には山賊が住み着いていて、どうみても正常な取引先の相手ではなさそうだ。
もしかすると、リーフナーは山賊に騙されていたのではないだろうか。
というかそれが確実そうだ。そもそも洞窟で取引をすると言われた時点で不審に思わなかったのだろうか。もしも怪しい取引相手だとわかっていて取引を敢行したのだとすれば、愚かすぎる。それが例え妻と娘のためであったとしても、死んでしまったらなんにもならないのだ。なんにも。
命さえあれば、いくらでもやり方はあるだろうに。

話が通じる人間はいなさそうだ
露わな人骨で露骨。納得してしまった

山賊を斬り殺して刀の切れ味を確かめていると、宝箱のそばに露骨な人骨が転がっていた。これは今までの犠牲者達だろう。それにしても、リーフナーが生きている可能性は絶望的になってきた。後のことを考えて気が重くなる。グロスタさんはまさかリーフナーが死んでいるとは思っていないから、ショックを受けるだろう。あの怒りようじゃせいせいした、と言い出すかもしれないが。


どこを探しても手がかりが見つからないので諦めかけていたが、怪しい仕掛けを見つけた。もしやと思ったが、それはこの隠し扉が動いた瞬間、確信に変わった。隙間から漂ってきた死臭と腐臭が、如実にそれを物語っていたからだ。

ここで「取引」をしたのだろう

案の定だった
中には数人分のバラバラ死体に混じっておそらくだがリーフナーの死体もあった。取引と称してここに連れ込まれ、あっという間に殺されたのだろう。遺書も手紙もなく、あったのは結婚指輪だけだった。この死体がリーフナーであるかどうかは、グロスタさんに見せれば明らかになるだろう。

それにしても胸糞が悪い。私は盗賊になって随分人を殺したり、物を盗んだが、善良な市民の命を取るようなことはなかった。鼻で笑いながら知ったように「やっていることも罪の重さも同じだ」という奴もいるだろう。だがそれは詭弁だ。私は一線を超えるようなことはしていない。人を騙し、全てを奪い去った上で殺すようなことはしていない。それが私に残った最後のプライドだ。行為はそれを行った理由によって区別されるべきだ。

「ちくしょう……」

握った剣が振り下ろされる相手はすでにいない。私が殺してしまったから。
先にこの死体を見つけていたら、もっと気持ちよく殺意を乗せて剣を振れただろうに。

製材所に戻った私は、グロスタさんの愚痴を早速聞かされた。

「あのブタ、今頃どこぞの街にでもいるんだろう? ええ?」
「これ……リーフナーさんのですか」

ポケットから出した指輪を見せると、グロスタさんはひったくるようにそれを奪った。

「リーフナーさんは……」

俯いて、それ以上言葉を続けることが出来なかった。
私の態度と指輪から察したのだろう。みるみるうちに、グロスタさんの目から涙が溢れる。


「ウソ、そんな……。今までずっと彼に裏切られたんだと思ってたのに。馬鹿な話ね」

指輪を見つめ、祈るように手を組んでグロスタさんは嗚咽を漏らした。

「早く助けを送ればよかったのに、ただ座って悪態をついて時間を無駄にしていたなんて。馬鹿なのはあたしだったのよ。みんなあたしが悪いの……」

何も言うことが出来ずに、湖畔で泣き続けるグロスタさんをおいて私はその場から去った。
グロスタさんは、これからずっと自分を責め続けるだろう。あの人が悪いんじゃないことは、誰の目にも明白だ。だけど、気持ちはそんなに論理的なものじゃない。
ため息をつく。
私が指輪を見つけなければ、あの人が苦しむことはなかったんじゃないか。
私は、ただあの人に絶望を届けただけだ。
答えのない自問は、リフテンに着くまでずっと私の胸を締め付け続けた。

2014年3月24日月曜日

金色は暁に燃ゆ 【12】

と意気揚々と出る前に、盗賊ギルドの命綱、トリニアさんに呼び止められた。

「あんたが新入りかい?」
「そうだけど」
「だったらうちの制服を着な。反乱軍の鎧で仕事をする盗賊がどこにいるんだい」

いうことはもっともだ。そういえば聞き流していたけれど、ギルドの制服を渡すという話をしていた気がする。

「何か理由があるの? 同じ鎧で揃えているのには」
「もちろんさ。もしも見つかった時に、うちらの仕業だとわからせるためにあるんだよ」
「なんで? そんなことしたらギルドに不利益が出るじゃない」

そう言うとトリニアは「まだまだガキだねえ」と溜息をついて、詳しいことを教えてくれた。

「うちらが仕事をしたと証明するってことは、それだけうちらの影響力が増すし名も売れるのさ。盗賊がいつも隠れてせせこましく生きていなきゃならないなんてのは、ただの勘違いだよ。本当の悪党ってのは、もっと堂々と人前に出て仕事をするもんさ。それが当たり前のようにね」
「す、すごいりろんだ」
「メイビン・ブラックブライアを知ってるだろう? あの女は表向きまっとうな商売で稼いでいるように見せて、裏じゃ手広く犯罪で稼いでる。誰しもがそれを知っているのに、あいつは逮捕されないでしょ?」
「あ、あー確かに! でもなんでそんな目立つことをするの?」
「あんただってその片棒を担ぎに行こうってんだからわかってると思ってたけどね。ヤバイ奴に誰が進んで関わろうとするんだい。権力で押し潰されるだけさ。そうやって自分に手出しを出来ないように押さえつけて民衆を黙らせ、その権力を使って反乱分子を潰していけば、そりゃもう立派な王様みたいだろう?」
「なるほど……。私達はメイビンのようなことをしようとしているわけね」

トリニアはその通り、と相槌を打って、樽の中から盗賊ギルドの鎧を取り出した。

「あんたが失敗しようと成功しようと、これはプラスになるってこと。わかったらさっさとそれを着て仕事に行きな」
「はーい」

着てみると様々なエンチャントが施されており、かなりいいものだということがわかった。手先も以前にもまして器用になった気がするし、体が軽い。その割に鎧を構成する革は固くも柔軟で、ただの剣に切られる程度の事なら十分に鎧として使えるだろう。意外と露出が多いのが不満だが、きっとこれは悩殺するためなのだろうとなんとなく納得した。


お墓が秘密の入口
早速向かおうとした私だったが、その前に鍛冶屋のバリマンドのところに寄った。

「バリマンドさん、私の評判聞いた?」
「……」

だまり続けるバリマンドは私がそこにいないかのように振る舞ったので、首根っこを掴んで壁に叩きつけてやった。いい気味だねえ、いい年したおっさんが屈服する様というのは。

「バリマンドさん、言ったよね。リフテンで有名になったら考えてやるって」
「あ、ああ……」
「約束を覚えているならさっさと出すもん出せ」
「アイエエエ!」

下からえぐり込むような捻りを付けたアッパーで腹をぶん殴ると、バリマンドはゲロを吐きながら壁にかかっている刀を指さした。

「くれるのね。ありがとう」

コクコクと頷くバリマンドをよそに刀を取ると、私はうっとりとそれを眺めた。

「いい仕事よバリマンドさん。これから常連になろうと思っているから、困ったことがあったらなんでも言ってね。私、あなたの技術だけは買っているから」
「アッハイ……」

未だにえづきながら地面に這いつくばるバリマンドの上で刀を振ると、重々しい風切り音を立てる。これなら滅多なことでは斬り負けることはないだろう。
それにしても、自分が盗賊だと認識して衣装まで着ると、心機一転で生まれ変わったような気さえする。ついこの間までの弱気な自分とはおさらばだ。このスカイリムで生き抜くには強くなくてはいけないのだから、当然のことである。
当然である。

ここがあの女のハウスね
ゴールデングロウ農園はリフテン(盗賊ギルドの街)のそばの湖にある孤島だ。逃げにくいし攻めにくい、なかなかうざったい作りをしている。おまけに岸壁が私の身長では登れない高さで、まともな出入口は船で入ることくらいしか無い。
湖を泳いで渡る。スカイリムの水はとても冷たく、普段なら死にかけそうになる。だけども事前に錬金術屋で低音への耐性をあげる薬を買っていたので、それほど苦労せずに渡り切ることが出来た。見張りは結構間抜けなようで、私が泳いでいるのに気づいたようだが水浴びをしている程度にしか思わなかったのか、すぐに視線をそらしてしまった。


ここがヴェックスが言っていた入り口だろう。

血が染み付いている

中には同じように下水道に忍び込んで殺された盗賊仲間の末路があった。だがギルドからはこの先駆者の話は聞いていないので、きっとフリーの盗賊だったんだろう。


中には罠が仕掛けられていたが、大したものではなかった。というか、ネズミが自分から罠に突っ込んで吹っ飛んだのには笑ってしまった。所詮ネズミ、ドブネズミである。

カジート(猫人)の崇拝対象である月

下水道を抜ける頃には夜になっていた。ちょうどいい、闇と共にあるのが盗賊だと二百年前の盗賊も言っていた。



裏口から消音の魔法をかけて忍びこむと、眠そうな見張りが数人いるだけで大したことはなさそうだ。そろりそろりと忍び歩きながら、まずは地下金庫にある取引に関する書類を盗み出そう。

汚い地下室だなぁ
お目当ての金庫を発見
金庫を見つけて舌なめずりをしながら、その鍵穴にピックを差し込む。
「チョチョイのチョイな」
実際簡単である。



中には取引に関する重要なことが書いてある書類を見つけた。
アリンゴスはこの養蜂場の権利を誰かに売っぱらったらしい。だがその誰かはわからない。分かるのは代理人がガラム・エイという人間であることだけだ。
つまりアリンゴスは盗賊ギルドからの束縛から逃れるために養蜂場を売ったということなのだろうか。だがこれではメイビンはハチミツを手に入れることができないので、事態はわずかにしか好転しない。これは結構根が深いことのようだ。相手側も盗賊ギルドからの報復を恐れているあたり、アリンゴスとギルドの繋がりや、ギルドの内部事情にも詳しい者のようだ。
「つまり、元ギルドメンバーとか?」
独り言を呟いて、書類をポッケにねじ込む。地下室の出口はまた下水につながっているようで、きた道を戻ることなく帰ることが出来た。


今度は蜂の巣を燃やすために小島の外側から回りこむ。見張りは交代の時間なのかおらず、すんなりと蜂の巣に近づくことが出来た。
いざ蜂の巣に近づき、火を着けようとしたところ突然怒声が聞こえた。見つかったのだ。
手早く魔法で蜂の巣に着火し、ええいままよと湖に飛び込んだ。


鎧が水を吸って重くなる。ひたすら逃げ延びようと、何度も湖のそこに潜って目をくらませた。幸いにも矢が跳んでくるだけでそれ以上追いかけられはしなかった。だが自分の顔の横を矢が通り抜ける風切り音など、二度と聞きたくない。
ネオサイタマ炎上


しばらく泳ぐと、製材所が見えてきた。今夜はここで休んで夜を明かそう。


次回予告
昨日の夜、全てを失くしてスカイリムの雪に濡れていた。
今日の昼、命を的に夢買う銭を追っていた。
明日の朝、ちゃちな信義とちっぽけな良心が、製材所に希望を蒔く。
リフテンは内戦が作ったパンドラの箱。
質を問わなきゃ何でもある。
次回「救出」。
明後日、そんな先の事はわからない。

2014年3月23日日曜日

盗賊ギルドへご案内 【11】

本当のアジトとはどういうことなのだろう。かなりの期待感を胸にふくらませながら、目の前の男についていく。

「これだ」


ただのタンスに見える
「どっかのファンタジーか何かで、箪笥の中に入り込んで雪の女王と戦ったりするわけ?」

ブリニョルフにぶっきらぼうに示された箪笥を見て、私は彼をからかった。

「それともこの中に女の子の一家が隠れ住んでるの? それか道化師のサイコパスに八つ裂きにされるの?」
「少しは黙っていたらどうだ?」

あまりしつこくからかうと、流石にイラっときたらしく冷たい口調で叱咤されてしまった。


アンネの日記かよ
「おおー」
「少しは驚いてもらえたかな小娘」
「地味すぎる」
「隠してあるのに目立っちゃしょうがないだろう」
「いやもっとさ、なんていうか。新鮮さというか。そういうものがほしい」
「俺達は世界を滅ぼそうと画策する悪の組織でもなければ、派手好きで内輪もめばかりしている魔術師ギルドでもないし、凝り性が行き過ぎて消えちまったドワーフでもない。理想と現実ってやつだな」
「夢と希望も、もう少しでいいから欲しいよ」

中に入ると、ラグドフラゴンと同じくらいの広さの広間があった。元々は下水道の貯水池だったのだろう。だが今は匂いもなく、天井も高くて意外と開放感のある場所だ。周りには同じ鎧を着た人達が私のことをじっと見つめてくる。ここにいる人間すべてが盗賊ギルドのメンバーなのだろう。


左が鰤。右がメルセル

広間の中心で私はメルセル・フレイという男に出迎えられた。どうやら彼が現在の盗賊ギルドのマスターらしい。ブリニョルフや他の盗賊と違って私を歓迎するような素振りは見せず、どちらかと言えば敵意を以って私のことを睨んだ。顔も悪人面だし、どうやら他の人間が「悪人」であるならば、こいつは「悪党」という肩書がよく似合いそうだ。

「これが新しいメンバーか、ブリニョルフ。こんなガキを連れてきてどうする気だ? お前が認めたんだから腕はいいんだろうが、子守とオシメの交換はゴメンだぞ」

私を一瞥してそう吐き捨てたこの男は、ブリニョルフにも食って掛かる。ここまでやっても認められないものかと思うと、苛立ちが募る。そりゃ下っ端だし、軽い仕事をこなしただけだ。だけどこいつにここまで言われるのは納得がいかなかった。今まで何度もこういう扱いを受けてきたせいか、こういうことには慣れているつもりだった。だけど、何故かこいつに対してはむかっ腹が立つ。別の出会い方をしていたら、すぐにでもクレイモアで首を切り落としてやるのに。

「メルセル、そう邪険に扱わないでくれ。これでも俺の部下だ」
「……いいだろう。なら一仕事してもらおうじゃないか。メイビン・ブラックブライアから依頼が来ている。それを片付けてもらおう」
「ちょっと待て、ゴールデングロウの事を言っているんじゃないだろうな? うちのヴェックスでさえ入り込めなかったんだぞ」
「だからやらせるんだよ。頼んだぞガキ。その小さな手で俺を殺そうと思う前に、仕事をこなして俺を信頼させてくれ。信頼は言葉からじゃ生まれないのは、当然、わかるんだろう?」
そう言って私から離れようとするメルセルをブリニョルフが止めた。
「おいメルセル。なにか忘れてないか」
「ああそうだった。盗賊ギルドにようこそ。……これでいいか?」

私の方すら見ずにそれだけ告げると、メルセルはさっさと自分の持ち場、マスターの机に歩いて行った。
ゲー、とゲロを吐くジェスチャーをしてその背中を見送ると、申し訳無さそうにブリニョルフが私の肩に手をおいた。

「あいつは誰に対してもああいうやつなんだ。すまん」
「あんなのがトップだなんて皆大変ね。少なくとも、上に立つ人間の柄じゃないわ」

ぺっと貯水池に唾を吐き捨てる。

「腕も、運営力もあいつが一番なんだ。さてと、俺からも言わせてくれ」


小娘(稼ぎ頭)とかくと凄まじいクズの匂いが漂う

「ファミリーへようこそ小娘。お前には目一杯稼いでもらえると期待している。失望させるなよ」
「はーい。ところでさっき話してたゴールデングロウって何さ」
「ああ、今から詳しく説明しよう。お前にもわかりやすく簡潔にな。うちのギルドのパトロンであるメイビン・ブラックブライアは酒造を営んでいる。だがその酒造の原材料のハチミツが突然売られなくなった。メイビンはカンカン、俺達に取引の復旧と、なぜメイビンを裏切ったかの調査を頼んできたわけさ」
「凄いわね、なんていうか、そのメイビンって人。交渉してもダメなら交渉の条件をこっちからへりくだって求めるわけじゃなく、力を使ってなんとかしようってわけね」
「その通りだ。まあそもそも、メイビンはうちのようなギルドに金を出してるだけあってまともな人間じゃあない。リフテンで誰かがブラックブライアをバカにすれば、その一時間後にはその死体が川に浮かんでいるか、牢屋行きだ」
「こわっ」
「コワイぞ。俺でさえメイビンと話すときは敬語になる。学もないのに脳みそが必死に敬語をつくり上げるのさ。あんな経験、二度とゴメンだね」
「ふーん。私は敬語くらい使えるけど」
「じゃあメイビンとの交渉はこれから全部お前に任せよう」
「やめて。んで話を戻すけど、私はどうすればいいの?」
「ゴールデングロウ農園の蜂の巣を3つ燃やせ。リフテンで燃え上がる炎ほど、こちらの意思を迅速に伝える手段はない。2つ目に、何故こんなことになったかを調べる書類を見つけろ。ゴールデングロウがメイビンにハチミツを売らないなら、別の奴に売っていることは確実だ」
「りょーかい」
「ああ、それとゴールデングロウについてはヴェックスが詳しい。彼女に詳しく聞いてみてくれ」


絶対領域パネエ!

ラグドフラゴンにいるヴェックスに話しかけると、きつい瞳でこちらを睨んでくる。しかもしょっぱなからこんな敵対心剥き出しのことを言われるとは。だけどメルセルとは違い、この人は本気で私を見下してバカにしているわけじゃなさそうだ。どちらかというと、探っているという感じだろう。

「ヴェックスお姉ちゃんに聞いてきなさいって言われてきました」
「お姉ちゃん!?」

自分からお姉ちゃんとか擦り寄るのもどうかと思うが、この人はなんだかんだ言って面倒見がよさそうな匂いがする。それになんとなくだが、この人はこういったアプローチに慣れていない気がするのだ。周りは男ばっかりだし、子供もいなさそうだし、若干寂しそうな雰囲気も持っている。
といってもわざわざ擦り寄るためにこういうことを言ったのではなく、単純にお姉ちゃんという感じがするからだ。どっちかというと姉御だけど。

「いやなんか、おじさんはいっぱいいるけど、お姉ちゃんってのが似合う人って初めてだなって」
「あ、あんまりにも聞き慣れない言葉だったからびっくりしちゃったわよ。ところで何が聞きたいの」
「お姉ちゃんが前に忍び込んだゴールデングロウ農園に行きなさいって言われたから、聞きに来たの」
「……メルセルのクソ野郎。こんな子供にまで仕事をやらせる気かい。あたしが言ってやめさせてくる。ブリニョルフもなんで黙ってたんだ」
「私が認められるには、この仕事をこなすしかないの。だからやる。私だって、遊びでここに来たわけじゃないもの」

そう言うとヴェックスは私をまじまじと見つめたあと、ため息を一つしてまた木箱にもたれた。

「仕事は好きかい?」
「まだそうでもないけど。でもやるなら盗みがいい」
そう答えると、ベックスは笑ってそうだよな、と答えた。
「ヤクザみたいなこともしてるけどさ、本業は盗みなのさあたし達は。さてと、小さい盗賊さんに何を教えればいいの?」

微笑を浮かべて私に話しかけるこの人が、初めて私を盗賊と呼んでくれたことが何やら嬉しかった。今まではずっと子供扱いだったけれども、この人はちゃんと私を仲間だと思ってくれているのだろう。

「どこから侵入するといい?」
「ゴールデングロウのすぐ外に下水道がある。それを使えば、裏手の勝手口からすんなり入り込めるはずさ。それと警備が厳重だから見つかったら慰み者になるのは覚悟しといたほうがいいわよ」
「どれくらい厳しいの?」


とかいいつつしっかり逃げ延びる姉御


「来れるもんなら来てみやがれ、と言わんばかりの布陣だったよ。傭兵を二十人は雇ってる」
「わかった。絶対に見つからないようにする」
「仕事は手早く確実にね。あたりまえだけど、進入するなら夜にしな。消音の魔法もあったほうがいいわ」
「それなら持ってる」
「ならOK。もしなんかあったら、逃げてリフテンまで来るんだよ。そしたらあたし達が何とかしてやる」
やっぱりこの人は姉御だなぁ。
「うん。じゃあ行ってくるね、ありがとう」

初めてこの人は私を仲間扱いしてくれた。一人じゃないのだ、としみじみ感じる。もう母さんのいる家には戻れないけれど、ここが少しだけ居心地よく感じて、住めば都という言葉の意味が初めてわかった気がした。

2014年3月17日月曜日

リフテンに愛をとりもどせ 【10】

リフテンで債権回収をする前に、鍛冶屋、灼熱の戦槌で武器を見てみると、面白いものがあった。なんと刀である。それを見て思わず美しいと呟くと、武器を研いでいるバリマンドが振り返った。



これだけ見るとガンつけられてるみたい
「お前に扱うのは無理だ。お前の細腕でそれを振るってみろ、自分の腹でも切るのが落ちさ。ちなみにアカヴィリではハラキリというらしい」
「ムダ知識どうも。それと余計なお世話。クレイモアの扱い方なら慣れてるつもりだよ」
「ガキが何を言うんだか。どちらにしろガキに武器は売らん。このバリマンド様は、非力な奴が使う剣を見るのが大嫌いだからだ」
「じゃあ私が力を証明したら、売ってくれるのかな? あの刀を」
「はっ! いいだろう。街中に知れ渡るくらいになったらまた来るがいいさ」
「その言葉、忘れないでよ」

私は背伸びをすると、近くのプローン質屋に足を踏み入れた。このリフテンでもなかなか商売は成り立っているようで、そこそこ金回りは良さそうだ。慈善事業に力を入れるくらいなんだから、私達に払う金はあるはずだろう。





まず世間話から会話をはずませ、本題に入る。


「ペルシさん、盗賊ギルドへの借金、まだ払ってもらってないそうですけど」


そう切りだすと、乞食を見るような蔑んだ目で私を見つめる。


「なんだ? 盗賊ギルドは君のような子供に使いっ走りを頼んでるのか?」

「そうですよ。盗賊ギルドの使いっ走りです。早く借金を払ってもらえませんかね」
「何も知らないようだから言っておくけどね、あれは借金なんかじゃない。他の盗賊がうちの店に入らないように契約を結んだから払うことになった金だ。要するにみかじめ料のようなもんさ。ところがどうだい、今の君たちにはとても組織を維持できる力もありそうにない。そんな奴らに誰が払うかね。乞食に恵んだほうがよっぽど人のためになる」
「つまり払っていただけないと?」
「そうだ」

手袋をしっかり嵌めてあるのを確認する。この手袋、初めはただの手袋だと思ったのが、実は素手の威力を増大させる珍しいエンチャントが付いているらしい。私のような非力な子供には最適だ。


「払っていただけないと酷いことになりますけど。あなたの頭皮のようなひどいことに」

「これはヘァスタイルだ!」

凄まじい勢いで怒鳴ったベルシは私に殴りかかる。


「きゃー怖い」




YouはShock!
「わかった! 払う! 払うからやめてくれ!」
「盗賊ギルドを舐めると痛い目見るわよ。思い知ったのなら、忘れず、町の人にも知らしめることね。誰のお陰で暮らせているのかよく考えるように」

地に伏して懇願するペルシを見下ろして捨て台詞を吐き店から出ると、自分でも自分の顔がニヤついているのがわかる。力を示すことほど気持ちのいいものはない。今ならエルフがなぜ帝国を攻めたのかもわかるような気がするほどだ。なんでも落ちてゆくのは早いものよ、と昨日泊まった宿のキーラバさんも言っていたけれど、そのとおりだと思う。私は自分がやっていることが悪いことだと知りつつも、その快感に抗えなくなりつつある。


どうせ悪人なんだ、気取ったってしょうがない。それに、これは目的のためなのだ。


さて次の取り立てに向かおう。




愛で空が、落ちてくる
宿屋のキーラバに払えというと、小汚いガキが何様のつもりだい!? と拳を振り上げてきたので交渉の暇なく殴り合いになった。こちらとしても不本意だけど、そっちがその気なら仕方ない。

しかしこの女将、徒手空拳が異様に強かった。フットワークの軽さも持ち合わせつつ、その爪には鋭利な刃物のような切れ味があったのだ。普通の人間ではありえない打撃とも剣撃とも取れる攻撃に、私はたじろいだ。だが弱みを見せては沽券に関わる。今の私はただの孤児ではなく、盗賊ギルドの取り立て屋なのだ。




YouはShock!
顔面への一撃をしゃがんで避け、そのまま体ごと下からえぐり込むように顎に一撃を食らわせる。クレイモアを振り上げるかのような一撃に、キーラバさえも膝をついた。

「わかった、わかったわよ! 払うわよ。払うからこれであんた達との貸し借りはナシだってことにして頂戴!」

「ハァ……ハァ……オーケー……!」

ふらふらする自分の頭を小突きながら回復魔法をかける。


「あのトカゲ……エンチャントされた手袋してる私と互角に殴りあうなんて……」


顔についた傷が治っていくのを感じながら、少々力に溺れすぎていたかと省みる。これでは帝国を滅ぼそうとしたエルフとやっていることが一緒だ。もっとスマートに、圧力をかけて相手から条件を引き出せるように努力しよう。ブってブってぶちのめす暴力ヤクザの時代は終わり、インテリヤクザの時代が始まったとか。


さて次だ。マジカを使い切るほど回復魔法をかけ終わった私は、次の取引先へと赴いた。





しかし町の各所でYouはShockした私の噂はすでに広まっていたらしく、以前に盗賊ギルドとつながりのあった人間は戦々恐々としていたらしい。素晴らしいことに、この人は私の顔を見るなりゴールドを差し出してくれた。これがインテリヤクザのやり口よ。


店を出て歩いていると乞食に話しかけられたので、金貨一枚を恵んでやると仰々しく私を崇めた。いいことをするのは実に気分がイイものだ。




イケメン
ラグドフラゴンに戻りブリニョルフに話しかけると、話はすでに彼の耳に届いていたようで、ギルドへの正式な加入を認めてくれた。

「どうよ」

「やるじゃないか小娘。あいつらには結構手を焼いていたんだ。まあわかりやすく言うと、付き合いが長すぎてタカをくくられてたんだな。だがお前は俺でさえ躊躇うようなことをしてきっちり金を集めた。その金は好きに使っていいぞ」

遠回しに責められている気がする。もしかしてこのお金、私に殴られるから徴収しないんじゃないよね。流石に仕事の上司に手を上げるようなことしないのだけれど。


「え、でもいいの?」

「今回の目的は盗賊ギルドがまだまだ死んじゃいないことを触れ回ることだったのさ。だからお前はしっかり仕事を果たした。その金貨300枚はお前への報酬だ」
「じゃあありがたくもらっておくね。てっきり私に殴られたくないから受け取らないのかと思っちゃった」
「無邪気なガキが一番残酷ってよく言うもんだ。本当にその通りだ」
「えーそうかなぁ」
「そうだ。さてと、それじゃあ正式にお前をギルドに迎え入れるために、本当のアジトにご招待しようか」

ブリニョルフは私の背中を押して、ラグドフラゴンから連れだした。