リバーウッドの目前でオオカミに襲われたが難なくそれを始末した。
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凶暴なオオカミが街道沿いを徘徊している |
内戦の影響だろうか、街道沿いにまでオオカミが出没している。街道の安全確保に人員を割けるほど、衛兵はいないのだろう。村のすぐ近くなのに山賊の根城があるなど、村の付近の安全は全く確保されていない。ここに来るまでに衛兵と一人もすれ違わなかったのもその証拠だ。
村についてハドバルにまず案内されたのは、鍛冶屋のアルヴォアという男の家だった。
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汚れた顔は働く男の証 |
訝しげな視線で私を見てくる。それもそうだろう、両手剣を背負い、鎧を来た少女など普通ではない。ハドバルが説明してくれたおかげで私はドラゴンの襲撃から逃れたハドバルの友人ということになり、アルヴォアの家で泊まれることになった。アルヴォアはハドバルのおじさんで、この街唯一の鍛冶屋であり、ハドバルの居候先らしい。
「ない。色々赴任地に飛ばされることが多いんでな、一つどころの家はない」
「じゃあ資産は?」
「帝国の銀行に預けているから今は手元にない」
「は?」
「つまりお前に渡せるようなものはない」
「騙しやがったなァーーーッ!?」
「勝手に人のものを難癖つけて奪おうとしていたのはお前だろう。残念だったな」してやったりといった満足顔で私を見やるハドバルに、ふつふつと怒りがこみ上げる。
「元は死刑になるはずだったお前を助け、ここまで連れてきてやったんだ。あれぐらいの役得があったっていいだろう」
「それは公務として当然のことじゃない! というか役得は全然関係ない! 帝国兵ってのはみんなあんたみたいにクソったれなの!?」
「なんだと!? お前はもっと常識のある奴だと思っていたぞ!」
「常識がお前の口から出てくるとは思わなかったよ!」
「いい加減にするんだ!」
スカイリムの冷気が吹き飛ばされるような突然の横槍に、私もハドバルも思わず体が跳ねた。恐る恐るそちらを見ると、先ほどのアルヴォアという鍛冶屋が腕組みをして私達を睨んでいる。「お嬢ちゃん。戦場で約束したことってのは、感情が昂っていて普通じゃ考えられないような約束をついついしちまうもんだ。ハドバルとどんな約束をしたかは知らないが、無しにしてやってくれないか」
「でも……」
「その代わりにある程度のことなら俺が何とかしようじゃないか。それでいいだろう?」
「だけど……」
「気がひけるのはわかるさ。だが気にするな。こいつだって内戦中に軍に志願して、色々と苦労しているはずだ。その分、村で暮らしている俺が負担したって、こいつの役にたっているようで悪い気はしない。そもそもハドバルとどんなことを約束したんだい?」
「その、でも」
「言ってくれないと、俺だって納得ができないさ」
「……こいつが私の着替えをねっとりじっとりねぶるように見つめて、あげく謝らずに開き直ったんです。だからこいつの資産の一部を譲り受けるって。生き延びたら考えるって」
「……なるほどなぁ。言わせてすまなかった、お嬢ちゃん。……俺の鍛冶の技と、材料を自由に使っていい。それでどうだい?」
「わかりました……」
アルヴォアの冷静で筋の通った物言い、そして何よりクマのような体躯に気圧されて、私はそれを了承してしまった。この人のいうことは筋が通ってるし、私も感情的になりすぎていたのかもしれない。
「とりあえず、今日はゆっくり休め。疲れているだろうからな。俺の妻に、とびっきりのシチューを作らせよう」
「ありがとう……ございます」
「俺は怒ったわけじゃないさ。そんなに落ち込まずに、ゆっくり休みなさい」
「はい」
肩を落としてアルヴォアの家に入ると、綺麗なシグリッドという女の人が出迎えてくれた。アルヴォアの奥さんのようだ。話は大体聞いていたから、ゆっくりしていけと言ってくれた。
「それにしてもハドバルも災難ね」
「そうですね。よくよく考えると、ドラゴンに襲われるなんて本当に災難です」
「そっちもそうだけど、きっとハドバル、歩けなくなるわよ」
「えっ?」
次の瞬間聞こえてきたのは、ハドバルの絶叫、アルヴォアの怒声、何かが川に放り込まれる音だった。
「あの人、子供を大事にしない大人が大嫌いなのよ。かっこいいでしょ」
「え、ええ……」
「反省するまで帰ってくるな! ペド野郎!」
「ああやっぱり、あなたってかっこいいっ」鍋をかき混ぜながらうっとりと呟くシグリッドさんを見ながら、その時初めて、私はハドバルに少し悪いことをしたな、と思った。
「そのシチュー美味しい?」
「美味しいれふ」
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