2014年3月6日木曜日

斬首台から動き出す 【2】



「なんだって、ドラゴン!?」

誰かが叫び、やっと事態を飲み込めた。
帝国軍兵が絶叫を上げ、市民は喚き、幾ばくかの囚人はこれを好機と頭を素晴らしく回転させて逃げ出した。
かくいう私も、誰かの声につられて走りだす。
見張り塔の中に逃げ込んだ私は、二人の男が悠長に会話をしているのに文句を言いたかったが、口から言葉が出てこない。ただわかっているのは、事態は何も好転しちゃいないということだ。
一人が見張り塔の上に上がろうと駆けだしたので、何も考えずについていく。動いていないとどうにかなりそうだったからだ。
だが私の目印、つまり先で走っていた男は急に熱風で遮られ見えなくなった。



赤熱した大気が消えると、そこには変わり果てた目印の姿があった。

腰を抜かした私の後ろから、その穴に飛び込めという言葉が聞こえる。



どうせ死ぬなら、焼け死ぬより骨折で死んだほうがマシだ。

そう決心すると私は宿へと飛び降りた。両手が使えないので上手くバランスが取れずに転がってしまったが、幸い大した怪我はない。
そのまま宿の外へ走りだし、絶句した。



あの数十秒の間に町はあっという間に焼けただれてしまっていたのだ。

怯えてびくついている私を元気づけるように、ハドバルという帝国兵が私に喋りかける。
なんと、この場を走り抜けるというのだ。
それしか選択肢はないと気づいた私は、両手を縛られたまま足だけで走り抜ける。腕を使わず走ることがこれほど辛いことだなんて、思いもしなかった。



壁に張り付き、見つからないようにその下をくぐり抜ける。

それから私はただひたすらに走った。長い間歩いて旅をしてきたから足腰には自信があったけれども、こんなにも心臓が痛く感じたのは、幼いころに溺れかけて以来だ。



汚い罵声を浴びせながらも懸命に戦う彼らを尻目に、私はハドバルの後ろをついていった。

そしてそのままハドバルについて砦に入ろうとした時、馬車の中で私に話しかけてきたレイロフという男と、ハドバルがいきなり口喧嘩を始めたのだ。
どうやら彼らは同じ村の出身にもかかわらず、反乱軍と帝国軍に別れてしまったらしい。でも

そんなことはどうでもいい。

ハドバルを突き飛ばすようにして砦の中に転がり込んだ。

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